研修設計で大切なこと
Transfer of training といいます。
日本語では、研修転移と訳されています。
日本語より英語のほうが格好いいですね(笑)
それはさておき、研修設計には大事な視点が2つあります。
①「受講者ファースト」で設計されていること
②その受講者に「望ましい変化」が訪れること(ポジティブ・トランスファー)
①受講者ファースト
私が会社を作った頃 「研修企画者(人事など)・受講者・その上司。
一体誰の満足を狙うべきなのか?」という疑問が頭を巡らしました。
もちろん「そりゃ全員でしょ」というのは簡単です。
しかし、本当にそうなのか、この10年以上考えてきましたが、
自分の中で確信を得た「唯一解」があります。
それが「受講者ファースト」です。
その受講者に変化が訪れることが重要になります。
その詳説は次の②でするとして。
通常、受講者といっても1クラス複数人、実際には10人~30人程度の受講者が研修には参加されます。
したがって、受講者全員の共通課題を見つけて、フォーカスすること。
そして、研修で全員が最低限獲得し、実践で発揮してほしい各々の行動変容を
最低目標とすること、が必要です。
でも、実際に発注してくれる人は、人事や人材開発担当者でしょう?
だったら、人事・人材開発者の満足を得ることが、
研修会社にとっても、商売につながるのでないのか? という疑問も浮かぶかもしれません。
しかし、それは間違いであるケースも多々あるのです。
理由として、以下のようなことが挙げられます。
1.人事開発担当者が必ずしも最適解を持っているとは限らない
⇒もちろん担当者によりますが、自身の好みや、思い込みで研修設計をされるケースも少なくありません。
2.特に内資系企業は、研修担当者が人事異動で他部門からやってくる場合が多く、着任時には研修スペシャリストでないことが多い
⇒この点に関しては、個人的には日本企業の課題の1つだと考えています。
(ちなみに外資系はスペシャリスト志向なので、キャリアすべてが研修担当という方も少なくありません)
3.最後は「受講者」の声に、大きく振られることが多い
⇒人事のリクエスト通りにやってみたが、受講者のニーズとマッチしていないため、人事の方が見直しを図るケースが良く見受けられます。
確かに、講師やそのコンテンツにも大いに責任はあると思います。
しかし、多くの場合、初期段階の受講者ニーズの読み間違いが多分にあるのです。
そして、ほとんどの人事・人材開発担当者は、受講者アンケートに気持ちや考えが大きく揺れ動くものです。(特に批判的なアンケートに動揺します)
従って、これらの解決のためには、研修コンサルティング会社が、
お客様( 人事・人材開発担当者 )とディスカッションを行いながら、
受講者ニーズを読み解き、最適な研修設計をしていくことが必要になります。
そして、研修設計の要諦の2つ目、
②その受講者に望ましい変化が訪れること(ポジティブ・トランスファー)
は、言うに及びませんね。
これは、そもそもの多くの研修の目的でもあります。
職場で直面する共通の課題があり、その課題を解決する1つの手段として研修を活用します。
最近では、働き方改革などで、上司も先輩も超多忙極まりなく、OJTの指導時間が取れません。
それもあってか、研修需要は毎年右肩上がりの傾向です。
つまり教育に関して、外のチカラを借りるということです。
ただ、外のチカラにも限界があります。
研修できることはあくまでも共通課題への処方箋なので、
職場毎、個人毎の課題解決には直結できないことも少なくありません。
したがって、研修設計段階から、以下の点について、
人事・人材開発担当者と研修会社がしっかりと協議する必要があります。
・参加受講者の共通課題(=受講者ニーズ)をしっかりと把握しておく
⇒それが思い込みではなく論理的に重要な課題であるかの検証も、研修が空振りしないために重要
・最適な「研修テーマ、研修時期と期間、研修場所、実施理由、プログラムイメージ、講師イメージ」を
設計しておく
・研修効果を最大化するために、事前課題や事後課題などの必要性と構成を検討する
⇒「受講者に負荷をかけること」を課題の第一目的とすることはあまり望ましくない
・終了後の効果検証方法を用意しておく
⇒主には、以下2つ
①「受講者アンケート」(事前の期待、ニーズ、効果、実行計画など)
②「上司アンケート」実行計画の進捗管理、部下の行動変化確認など
すべては受講者の成長と変化のため。
ご参考になれば幸いです。
- 2019/12/12
- 社長コラム
- 投稿者:葛西 伸一