説得の三要素:アリストテレスの洞察と現代への応用
仕事は誰かを説得して、
YESを引き出すことで前に進みます。
私自身のキャリアを振り返っても、
誰かからYESをもらうことで
全てが前に進んでいたことが思い出されます。
たとえば、
会社を設立する際には
「融資をしてもらうYES」
顧客と商談をしているときは
「このプログラムで研修をお願いしますというYES」
あるいは
「講師として葛西さんにお願いしたいというYES」
現在の当社の優秀なメンバーに入社してもらうためには
「メンター・クラフト社に入社したいですのYES」
・
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こう考えると、
仕事はとにかく
「誰かのYESを積み重ねて成果を出していくもの」
と言っても過言ではありません。
では、
相手にYESと言ってもらうためには、
どうしたら良いのでしょうか?
アリストテレスが提唱した「説得の基本原則」を参照して
考えてみましょう。
時代は古代ギリシャ。
「ロゴス(論理)」
「パトス(感情)」
「エトス(信頼)」
の三要素を、
アリストテレスは「説得の基本原則」として提唱しました。
アリストテレスが活躍した紀元前4世紀、
アテネでは市民が政治や法に参加する場面が多く、
弁論術が重要視されていました。
アリストテレスは、
説得を「聞き手に信じさせる能力」と定義し、
そのために必要な要素としてロゴス、パトス、エトスを挙げました。
これらは、人間の思考と感情の両面を捉え、
話し手自身の信頼性を加味した説得のフレームワークです。
この三要素を理解し活用することは、
ビジネスシーンにおいても、他者からYESを引き出し、
成果をあげるための強力な武器となります。
三要素を詳しくみていきましょう。
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● ロゴス(論理)とは
ロゴスは、論理的な構成と根拠による説得を指します。
聞き手の理性に訴え、明確なデータや事例を用いて筋道を立てることがその鍵です。
古代ギリシャでは、市民間での議論や政治討論が活発で、
論理的な思考が教養の一部とされていました。
現代のビジネスでも、ロゴスの重要性は変わりません。
● パトス(感情)の役割
パトスは、聞き手の感情を動かし共感を得る力です。
アリストテレスは、人間の行動は感情に強く影響されると考えました。
恐怖、希望、喜びなどを引き出すことで、
聞き手が提案を自身の課題と捉え、行動を起こしやすくします。
● エトス(信頼)の重要性
エトスは、話し手自身の信頼性や人格に基づく説得力です。
話し手が専門的な知識を持ち、聴き手に共感していくことで、
誠実であると認識されることが、聞き手の判断に大きく影響します。
アリストテレスは「話し手の人格が最も強力な説得力を持つ」と述べています。
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当時の修辞学における知見は現代においても有効であり、
私たちが他者の「YES」を引き出す際におおいに活用できます。
いつの時代も、仕事は誰かを説得して「YES」を引き出すことで前に進みます。
裏を返せば、説得が上手な人は成果を上げやすく、
そうでない人は苦戦しがちです。
当社のプレゼンテーション研修では、
この説得の三要素を基盤とした具体的なスキルを提供しています。
特に、以下の3つのスキル(S・M・D)に焦点を当てています。
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● Story(論理構成)
ロゴスを活用して、聞き手が自然に納得できるストーリーラインを作る技術です。
課題提示から解決策、そして行動への導線を描くことで、聞き手を論理的に引きつけます。
● Material(資料作成)
パトスとロゴスを視覚的に補強する資料作成のスキルです。
直感的にみやすく、適切なデザインで情報を強調し、感情に訴える要素を加えます。
● Delivery(伝達技術)
エトスを高めるために、
話し方や表情・ジェスチャー・アイコンタクト・抑揚・間の取り方などのスキルを指導します。
これにより、聞き手との信頼関係を築き、感情に働きかけます。
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説得力は、一朝一夕で身につくものではありません。
アリストテレスの時代から現代に至るまで、
論理・感情・信頼の三要素は、
人間の本質に根ざした普遍的な原則です。
この原則を理解し、
Story、Material、Deliveryのスキルで実践に結びつけることで、
他者を動かし、成果を引き出す力を強化できます。
また、当社の研修「ビジネス交渉力」においても、
ロゴス、パトス、エトスの重要性を語ることも多くあります。
もちろん、ビジネスシーンだけでなく日常生活でも、
この説得力を磨くことは、多くの場面で成功をもたらすでしょう。
今一度、自分のコミュニケーションスキルを見直し、
「説得の三要素」と「 S・M・Dの3つのプレゼンスキル」
を意識してみてはいかがでしょうか。
- 2025/01/16
- 社長コラム
- 投稿者:葛西 伸一