すごいぞ統計分析 食わず嫌いから脱却しよう!(後編)
実践的にExcel を活用することの大きなメリットをご紹介しました。
今回の後編では、実務でどのように活用するのか、
具体例を挙げながらご紹介します。
以下のような「従業員のエンゲージメントスコアと離職率のデータ」を例にとって
「回帰分析」がどのように役立つか、見てみましょう。
■ 分析目的の設定
分析目的は、大きく以下の二点とします。
①エンゲージメントスコアが離職率に与える影響を定量的に分析すること
②エンゲージメントスコアを向上させると離職率がどの程度下がるのかを予測すること
■ 回帰分析結果(目的①に対して)
具体的な手法は省きますが、Excelで(マウスだけで!)簡単に分析することができます。
・離職率 = 45.0 − 0.5 ×エンゲージメントスコア
・回帰モデルの信頼性:決定係数(R2)= 0.995 → 信頼性が非常に高い
■ 回帰分析結果の解釈(目的②に対して)
上記の結果から、「エンゲージメントスコアが1ポイント上がるごとに、
離職率は0.5%低下する」ということがわかります。
例えば、エンゲージメントスコアを60から70に上げると、
離職率は5%下がる可能性があるということです。
■ どのように活用できるか?
(1) エンゲージメント向上施策の効果測定
例えば、離職率を10%以下にするためには、
エンゲージメントスコアを70ポイント以上にすることが必要だとわかります。
そのための具体的な施策(研修や働き方改革)の立案や、
従業員数・エンゲージメントスコアに応じた投資額を考慮した
施策の投資対効果(ROI)の定量化を通して、
重点投資すべき部門や施策が明確になります。
(2) 離職リスクの高い部署の特定
エンゲージメントスコアの低い部署を特定し、
早期・優先的に対策を打つことが可能になります。
(3) 経営層への提言
データに基づいて「エンゲージメント向上が離職防止につながる」と説明できますし、
そのための意思決定をサポートすることができます。
他にも様々な活用法が考えられます。
■経営:売上予測と意思決定
売上データや市場動向データをもとに、リソース配分や在庫管理を最適化。
無駄なコストを削減し、戦略的な投資を実現。
■人事:離職率や離職時期の予測
社員の勤務年数、評価データ、労働時間などを用いて離職率を予測。
予測に基づき、対象社員へのエンゲージメント施策を実施し、離職率を低減。
■総務:社内イベントの効果測定
イベント参加前後のアンケートデータを比較分析し、エンゲージメントの変化を測定。
イベントのROI(投資対効果)を把握し、イベント実施内容や手法を改善。
■マーケティング・営業:売上向上のための店舗改善提案
POSデータをもとに、顧客が同時に購入しやすい商品を特定。
売場レイアウト変更による店舗改善を通じて売上増大を実現。
統計分析は「理系の人だけのもの」と思われがちですが、そんなことはありません。
ビジネスでは文系・理系の区別なく、使えるものはどんどん活用すべきですし、
足りないスキルは学べば良いのです。
Excelを使えば誰でも(教科書を開かなくても)統計分析はできます。
日常的に活用すれば、定量的で高精度な意思決定を通じて、
日本経済の成長にもつながる大事な力になると信じています。
- 2025/03/31
- コンサルティング
- 投稿者:講師 河野 貴史